慢性炎症を考える時、腸の健康が大切な理由

「炎症」と聞くと、赤く腫れたり、痛みや熱が出たりする状態を思い浮かべるかもしれません。
しかし、体の中には、目立った症状がなくても長く続く炎症があります。それが「慢性炎症」です。
そして慢性炎症を考えるうえで、目を向けたい場所の一つが、腸です。
急性炎症と慢性炎症の違い
けがや感染に対して起こる「急性炎症」は、体を守り、傷ついた組織を修復するための反応です。通常は、原因が取り除かれ、回復が進むと治まります。
一方、「慢性炎症」は、刺激や免疫の異常などによって、炎症が長期間続く状態です。
本来は体を守る反応でも、終わらずに続くと、健康な細胞や組織に負担をかけてしまいます。
慢性炎症は、さまざまな病気と関わっています
関節リウマチやSLE、血管炎、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患では、免疫が自分の組織を攻撃し、炎症が続きます。
また、がんと慢性炎症にも深い関係があります。長く続く炎症が一部のがんの発生リスクを高める一方、がんの周囲で起こる炎症が、その進行に関わる場合もあります。
つまり、病気によって炎症が続くことも、続く炎症が病気の発生や進行に関わることもあるのです。
なぜ、腸内環境が大切なのでしょう?
腸は、食べ物を消化・吸収するだけの臓器ではありません。
腸の粘膜は、体の内側を守る「バリア」として働き、腸内細菌と免疫は互いに影響し合っています。
このバランスが崩れ、腸のバリア機能が低下すると、細菌やその成分が腸の外へ移動し、免疫を刺激することがあります。こうした仕組みが、全身の炎症に関わる可能性が研究されています。

腸の状態は、お腹の中だけで完結するものではないのです。
ただし、これらの病気がすべて腸から始まるという意味ではありません。
遺伝や環境など、複数の要因が関わります。
腸内環境を整えることは健康を支える大切な視点ですが、それだけで病気を予防・治療できるわけではありません。
腸で続く炎症を、放置しない
腸で炎症が続くと、粘膜の傷害や出血、栄養の吸収低下などにつながる場合があります。また、長年続く大腸の炎症は、大腸がんのリスクにも関わります。

「いつも下痢だから」
「お腹が痛くても、そのうち治るから」
そうして不調を我慢し続けず、原因を確認することが大切です。
一方で、便秘やお腹の張りがあるだけで、炎症があるとは判断できません。
腸内環境の乱れと、腸に炎症があることは、同じ意味ではありません。
健診結果では、どこを見る?
検査項目に含まれていれば、次の項目が手がかりになります。 (あくまでも参考までに)
項目 | 見るときのポイント |
CRP | 炎症で上がることがあります。ただし、場所や原因までは分かりません。 |
白血球数 | 炎症や感染などで変化します。腸の炎症だけを示すものではありません。 |
ヘモグロビン(Hb) | 貧血の確認に使います。消化管からの出血などが背景にある場合もあります。 |
便潜血 | 便に血液が混じっていないかを調べます。陽性なら精密検査が必要です。 |
血小板数(PLT) | 炎症が続くと増えることがあります。鉄欠乏などでも増えるため、貧血や鉄関連の項目と合わせて確認します。 |
アルブミン(Alb) | 炎症によって低下することがあります。低値を単なるタンパク質不足と決めつけず、肝臓・腎臓の働きや、消化管からの喪失なども考えます。 |
これらは手がかりであり、腸の炎症を診断する検査ではありません。
CRPが正常でも、腸に炎症がある場合があります。
血便、長引く下痢、意図しない体重減少、夜中に目が覚める腹痛や下痢がある場合は、健診結果が正常でも受診しましょう。
腸を大切にすることは、全身を大切にすること
腸の健康を考えることは、便通をよくすることだけではありません。栄養を取り込み、体を守るバリアや免疫の働きを支えることでもあります。
だからこそ、食事を見直すときも、「腸にいいと言われる食品」を増やすだけでなく、自分の体調や便の変化、食べた後の反応にも目を向けましょう。
腸にいいと言われる食品が、逆に体調を悪くしてしまうことがあります。
私の栄養相談では、食事・睡眠・ストレス・お腹の状態・健診結果を一緒に整理し、日々の食生活を考えます。受診が必要なサインがある場合は、医療機関への相談をおすすめします。
お腹の不調を、いつものことにしない。腸の健康を、全身の健康につなげて考えてみませんか。

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